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WEC2020 参加レポート ニューノーマルに適応

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By: MPI Japan | 11 16, 2020

MPI World Education Congress (WEC)2020参加レポート
Hiroko Maeda前田 央子(まえだ・ひろこ)
株式会社ピーアールセンター
国際経済室 チーフディレクター


■ハイブリット型での開催だったWEC 2020
11月4日から6日の3日間にわたり、MPI ワールド・エデュケーション・コングレス(World Education Congress: WEC)2020が開催されました。年に一度開催されるMPIのシグネチャー・イベントであるWEC。本年はリアルとデジタル(オンライン)のハイブリッド開催となりました。リアル版の会場は、米国テキサス州グレープバイン市のゲイロード・テクサン・リゾート&コンベンション・センター。約700の参加者を数えたそうです。一方、デジタル版には、17か国から約1100名の参加登録があったとのこと。このたび、栄誉あるWEC 2020のレポーターを仰せつかった私は、デジタル版に日本から参加しました。
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世界中で猛威を振るう新型コロナウィルスの爆発的感染拡大の影響を受け、当初6月に開催が予定されていた当イベントは延期を余儀なくされました。世界で最も多くの感染者数および死者数を記録する米国での開催。コロナ禍の状況には不明要素が多すぎるため、少し余裕を持たせて、11月に開催することに決めたそうです。

参加前にアジェンダに目を通していて気づいたのが、「DIGITAL ONLY(デジタル版のみ)」の2文字の多さです。試しにリアル版参加者のためのアジェンダとデジタル版参加者のためのそれとを比較してみると、内容がずいぶん違っていました。

ライブ中継で双方が同時に視聴するジェネラル・セッション(リアル会場のメインステージで開催される)は毎日設けられているものの、それ以外のコンカレント・セッション(同じ時間に開催されている複数のセッション。参加者は興味のあるものを選択して参加する)は、リアル版のみ、デジタル版のみのものが、それぞれのアジェンダに並んでいました。

実は、多くのセッションはリアル版とデジタル版それぞれに同じ内容で提供されていて、それはつまり、セッション担当者/講演者は、WEC2020において、同じセッションを2回行ったということになります。これは、デジタル版が「付け足し」にならないための配慮。実に、デジタル版WECには、事前録画されたコンテンツやリアル会場で行われたセッション録画の放送といった内容はありませんでした。録画の場合は、講演者に直接質問したり質問にその場で答えてもらったりすることができません。

チャット機能を使えば、参加者同士で随時意見や感想を交換することはできるでしょうが、インタラクティブ性の高さでリアル版にはかなり劣ってしまいます。こうした配慮は、デジタル版参加者の満足度を大いに高めたことと思います。

■印象に残ったセッション
スクリーンショット 2020-11-11 16.03.33数多くの大変印象深いセッションに参加しましたが、そのなかでも、私にとって多くの気づきや学びがあったのは、「Engagement Enigma(エンゲージメントの謎)」。講演者はイベント・プランナーのダマニー・ダニエルズ(Damany Daniels)氏でした。

彼は、リアルであろうがデジタルであろうが、人がイベントに求めているのは経験である」と説き起こします。コロナ禍で飛躍的にイベントのオンライン開催が増え、この流れは変わることはないと思われます。Zoomなどのリモート会議システムは、瞬く間に世界中のPCにインストールされましたし、ますます快適で便利なリモート・ミーティングを実現するテクノロジーが開発されていくでしょう。そうであるなら、ミーティング・プロフェッショナルたちは、魅力的なオンライン・イベントをどのようにデザインしたらよいのか。

ダニエルズ氏は、10のポイントを示します。すなわち、「1.一緒に思い切ったことができるチームを作る」「2.デジタルのためにデザインする」「3.サイズが大事(大きいことはたぶん、よいことではない)」「4.コミュニティをよく考える」「5.風変りであることをよしとする」「6.つながるためのフォーラムを作る」「7.気まずくても大丈夫」「8.とにかく落ち着く」「9.最小単位のプログラム」「10.すばらしいストーリーを語る」。

「『Zoom疲れ』とは言われるけれど、誰も『ネットフリックス疲れ』って聞いたことないですよね」とダニエルズ氏。確かにそうです。ビンジ・ウォッチング(一気見)できるくらい、ネットフリックスをはじめとする動画配信サービスで配信される映画やドラマは熱中して見続けられます。他方、Zoomのミーティングで疲れてしまうのは、そこに映画やドラマに施されている「制作」がないから。人は、制作された瞬間を消費するのです。そうでない時間は、うまく消化できない。それが了解感の欠如となり、疲れとなり、「なんだか不満」という結果に終わってしまうのです。

映画やドラマをデジタル・イベントの範とするなら、では、映画の制作的特徴とは何でしょうか。劇場と比較してみましょう。劇場は、すべてを「堂々と」「現実より大きく」見せることが重要です。ところが映画やドラマは、小さなディテールを通じて人々にストーリーを経験させるのです。「神々は細部に宿る」志向の私たち日本人にとっては、わりあい納得できる論点ではないでしょうか。

そして、人々にストーリーを大切だと思わせるためには、コンテンツが重要なのはもちろんのこと、それをどういう文脈で示すのかも非常に大切。それによってそこで生まれる対話が決まり、そこから生まれるつながりが決まり、コミュニティの質が決まる。コミュニティの形成こそ参加者が求めているものですが、そこに能動的にかかわる姿勢が生まれるためには、素晴らしいストーリーを共有する経験が必要なのです。ダニエルズ氏のセッションは、デジタルでそれを達成するために留意すべきポイントが、実にわかりやすく説得力を持って示されていました。

このほかに、大変興味深く聞いたセッションは、「Case Study: WEC, the Journey from Live Event to Digital Hybrid Conference(ケース・スタディ:WEC、ライブからハイブリッド型への道のり」です。MPIのシグネチャー・イベントであるWECが、コロナ禍の影響を受けてライブ型からハイブリッド型へと形を変えて開催するにあたり、どのような課題があり、それを解決してきたのか。

スクリーンショット 2020-11-11 16.15.48MPIのCMM、CPMディレクターであるメリンダ・バーデット(Melinda Burdette)氏の報告です。アメリカがパンデミックの状態に陥ったときに、MPIはWECを延期するか否かの検討を行っていましたが、諸所の複雑な状況を判断せねばならなかったため、開催予定(6月)の5週間前になるまで延期を発表することができませんでした。もう少し早い段階で、「あらゆる選択肢を検討中」とのメッセージを出せば、参加予定者を不安なままにせずに済んだかもしれないとの反省があるそうです。

そのほか、コロナ禍がどのように推移するのか不明な中、無駄を省いた筋肉質な制作やロジスティクスを実現することで、開催予算に影響を与える要素を極力排除。リアル版会場選びについても、何名くらいの参加者があるのかを想定し、ソーシャル・ディスタンスや衛生対応のほか、さまざまな要件を当てはめていくと、当初ものすごく広いと思っていたスペースは驚くほど小さいと感じられたり。安全を確保するために、接触追跡はどうするのか、会場でのコロナウィルス検査の実行体制はいかに、誰が費用を負担するのか、会場での医療体制をどうするか。

さまざまな疑問がありましたが、内科医のグループと協力してこれらの課題を解決していきました。また、セッションの準備は、大変に不確定要素が多くて厳しい作業になったようです。リアルでもデジタルでも参加者が楽しめる工夫が必要である一方、予算は縮小しており、人員削減の影響でパートナー企業のレスポンスは遅れがちで、また、パネリストや講演者の中には現地への移動に難色を示す向きもあり、テキサス州の開催地域を拠点とする(=長距離を移動しなくてもいい)代替人員を探さねばならないなど、さまざまな課題がありました。

そのほかにも、食事や飲み物はどのように提供すべきか、オーディオ・ビジュアルのシステムはどう調整するか、など、通常であれば不要だった数多くの検討事項があったようです。
加えて、印象的だったのが、いわゆるモチベーショナル・スピーカーの登場が多かったこと。インタビューやメインステージでの講演、コンカレント・セッションでも、「おや、また?」と思うほどでした。人によって表現は違うものの、メッセージは「明るいほうを向こう。人生の大半はうまくいっている。

たまたま起こった悪いことに意識を集中して、意気消沈しないで、可能性を信じよう」。こうしたメッセージが多くなるのは、いかに今回のコロナ禍がこの業界に激しく打撃を与え、多くの関係者が「悪いこと」に苛まれているかを物語っています。

■まとめ――ニューノーマルに適応するために
今回のWECは、まさにニューノーマルに適応するための一つの大きな実験であったともいえるでしょう。

ハイブリッド開催というのは、実に2つのイベントを同時に走らせているようなもの。リアルとデジタル双方の参加者に満足してもらうためには、一方が主で他方が従というような運営の方法はできません。

それぞれが「参加してよかった」と思えるような工夫が必要でした。ダニエルズ氏の言うように、人はイベントに「経験を求めている」のであれば、その経験の質を高めるためにはイベントの型に応じた設計やデザインを適用していく必要があるし、あらゆる領域に神経の行き届いた計画を立て、決断を下していく必要があるのだと思います。それがたとえ、不測の事態によって一から考え直さなければならないのだとしても。

新しい行動様式や運営様式を適用しながら、それをビジネスとして成功させていくことが、これからのすべてのミーティングの所与の条件となっていくでしょうが、今回のWECは、そのための一つの有用で貴重な成功事例となったと思います。

奇しくもこの会期は、アメリカ大統領選の開票が進行する3日間となりました。WEC終了の翌日、バイデン候補の当選確実のニュースが流れ、アメリカという国も次の新しい時代を迎えようとしています。この流れと呼応するように、WECは新しい時代への適応のための息吹や希望を大いに感じさせるもので、大変充実した3日間でした。今回のWECの録画は、MPI Academyで視聴可能になるそうです。(了)
 
 

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